現代魔法研究会

TRPG動画用のやつです

【シナリオ公開】CoC・新CoC「恐怖のメロディ」

うっかり卓ゲ祭りを突然開催することになってネタがないよーという人へ、ワイワイやれるCoCのシナリオを公開します。6版7版両対応です。
シナリオの中身を知っていても遊べるし、セッションごとにストーリーがまったく違うものになるように作りました。
もちろん普段のセッションにも使ってください。

 

概要説明動画はこちら 

 

動画で使用する場合は上記の動画を親作品登録してください。

シナリオに不備があった場合、本ブロマガにコメントをお願いします。

 


※略称

KP:キーパー
PL:プレイヤー(探索者を操作する人)
プレイヤー:特にこう記述する場合、上記KPとPLを合わせた全ての参加者を指す
6版:『クトゥルフ神話TRPG』
7版:『新クトゥルフ神話TRPG』


■シナリオデータ

探索者人数:3~5人
プレイ時間:2~3時間程度(人数や進行速度によってそれ以上)


■はじめに

 このシナリオは『クトゥルフ神話TRPG』(以下「6版」)および『新クトゥルフ神話TRPG』(以下「7版」)に対応したものとなっている。基本的に6版を基準に記述し、7版の場合を注釈で補完する。
 舞台は現代日本を想定しているが、いつ、どこでも構わない。辻褄さえ合えばいいのだから舞台設定として明らかにおかしい点を修正するか、些事に目を瞑りさえすればプレイを阻害することはない。プレイ時間は2~3時間程度の短いものを想定している。ただし細かい描写を省いてテンポ良く進行する場合のものであり、キャラクター同士のやりとりに重点を置くなどの描写を重視してプレイするのであればそれより多くの時間が掛かるだろう。これについては事前にどの程度のテンポで行くかをプレイ想定時間と相談しながら集まったプレイヤーで相談して決定しておくこと。
 シナリオでは参加者全員に独創性とアドリブ力が求められる。PLが受け身ではシナリオ進行に支障をきたすため、積極的に発言・提案するよう求めること。またアイデアに詰まった場合は他のPLから提案するなど、お互いにフォローできればセッションの成功に大きく貢献するだろう。
 このシナリオをプレイする場合、実際のセッションではほとんどの時間シナリオ本文を参照しない。このシナリオの大部分はプレイヤー自身の手で描写していくためだ。調査すべき内容は提示されるものの、どのように調査するかはプレイヤー自身が決定することとなる。その調査方法を〈技能〉と結びつけて描写していくのが本シナリオのコンセプトとなる。そのため、シナリオは同じでも探索者の設定やプレイヤーによってストーリーが大きく異なり、何度でもプレイできるシナリオとなっている。同じプレイヤーで探索者を変え何度もプレイしてみるのも面白いかもしれない。

※注意点
 登場するNPC「襟日(えりひ)」には姓だけで名は設定されていない。特に設定する意味もない。KPは彼を「襟日さん」と呼ぼう。(ここは笑いどころだ。もし万が一にも意味が分からないなら、ラヴクラフトの『エーリッヒ・ツァンの音楽』を読もう)

◆あらすじ
 探索者はある休日、「襟日」という高名な音楽家の茶会に招かれる。和やかに会話が弾んでいったが、襟日が手に入れたという珍しいレコードを聞いたところで奇妙な体験をし、その夜から奇妙な悪夢を見るようになる。
 探索者はレコードにまつわる奇怪な噂を収集し、元凶となったレコードを破壊しなければならない。さもなくば狂気の夢に囚われてしまい正体を無くしてしまうだろう。

 

◆「調査フェイズ」について
 シナリオの大部分はレコードにまつわる噂を収集する「調査フェイズ」となる。詳しい処理はシナリオ本文に別記する。
 この調査フェイズでは具体的なストーリーはなく、調査対象をKPが提示し、ロールを行う〈技能〉と組み合わせて即興で演出することとなる。具体的にはどのような場面を演出してもよく、それによってシナリオそのものは有利にも不利にもならない。また結果により(ロール結果が致命的失敗でもなければ)耐久力や正気度ポイントが減少するようなこともない。プレイヤーは探索者やその場の雰囲気に合わせて自由に展開を創造してよい。

◆探索者の創造
 探索者の創造に特に制限はなく、また推奨される技能も存在しない。あえて役に立つ技能を挙げるのであれば「全ての技能」だ。使いやすい・使いにくい技能の差はあれど、あらゆる技能が役に立つ。
 職業、年齢も特に制限はないが、有名人の個人的な茶会に招かれるという導入のため、報道・出版関係者、芸能人、著名な学者、スポーツマン、あるいは何らかの一芸に秀でた者がいいだろう。平凡なサラリーマンや学生は不向きだ。しかし導入の雰囲気作りと妥当性という意味でしかないため、KPが許可するのであればその限りではない。

※参考例
 シナリオ筆者が以前行ったセッションでは、「シチリアマフィアのボス」などという探索者が提案された。KPである筆者は、彼が「襟日の欧州活動を支援するパトロン」であれば互いに友好的に進行できるのではないかと提案し、採用された。なお彼は後述する探索パートでは、他の探索者が地元で調査する中、一人だけ欧州を“仕事”で忙しく飛び回っていた。なお別に日本にいなくても調査フェイズの進行上は他の探索者と同じように判定を行い、セッションは問題なく進行していた。

◆KPの事前準備
 本シナリオでは探索者の人数に合わせて“敵”となるレコードの持つPOWステータスが変化する。KPは事前に以下の計算を行い、レコードのPOWを決定しておくこと。
 シナリオでは調査フェイズの行動回数として7調査ラウンドを想定しているが、プレイ時間を短縮するために短くすることもできる。その場合も計算式が変化する。

・計算式
 POW=(探索者の人数×調査ラウンド×0.6)+10(切り上げ)
 (7版であれば上記式の計算結果に更に×5する)

例)探索者が4人、調査ラウンドが7であれば、(4×7×0.6)+10となり、レコードのPOWは端数切り上げで27となる。(7版の場合、これに×5して135となる)

 

◆登場人物・用語
▼襟日(えりひ) 70代/男性
 世界的な名指揮者と呼ばれる老音楽家。シナリオでの役割は「事件の発端」「神話の被害者」。
 既に音楽の第一線からは退き、郊外の自宅で日々をのんびりと過ごしている。若い頃からレコード集めが趣味で、現在では古今東西の珍しいレコードを買い集めては鑑賞している。色々な人の話をのんびりと聞くことが好きで、ジャンルを問わず各界の有名人や若者を集めては茶会を開いている。
 他に特にこれといった設定はなく、KPは彼の年齢や性別、設定を自由に変更して構わない。指揮者ではなくピアノ奏者、バイオリン奏者などとしてもいいだろう。もし探索者に音楽家がいるのであれば恩師であると設定したり、あるいは現在は小さなピアノ教室を開いているとして探索者をその生徒としてもいいだろう。

▼襟日の手に入れたレコード
 襟日が海外のオークションサイトで落札した、エーリッヒ・ツァンの演奏を収録したレコード。シナリオでの役割は「呪いのアーティファクト」「シナリオボス」。
 レコードにはニャルラトテップの魔力と悪意が込められており、魅了された者を夢を通じてアザトースの宮殿へと招く。犠牲者はやがて狂気の内に怪死や失踪を遂げるが、精神はアザトースの宮殿に縛られたまま「外なる神の従者」と化し、かの神の眠りを慰撫する楽団の一員へと加えられてしまう。

▼エーリッヒ・ツァン
 ラヴクラフトの小説『エーリッヒ・ツァンの音楽』に登場する狂気のヴィオラ奏者。シナリオでの役割は「かつて存在した狂気の芸術家」「忌まわしい逸話」「原作キャラクター」。
 詳しくは原作を読もう。あるいは『エンサイクロペディア・クトゥルフ』を参考にしてもいいだろう。(ただし『エンサイクロペディア・クトゥルフ』ではヴァイオリン奏者と誤記されていることに注意)


■導入

 以下はシナリオの導入である。場面は日曜日の午後、襟日の自宅となる。
 探索者全員が一斉に来訪する必要は特にない。しかし、もし探索者同士が知り合いであるなら同伴するのがスムーズだろう。

◆探索者の来訪
 探索者がやってくると襟日は「よくいらっしゃいました」とにこやかに迎え入れる。
 通された部屋は落ち着いたセンスのいい家具にアップライトピアノが置かれていた。そして何より目を引くのは大きな棚いっぱいに収められたレコードだ。(襟日はレコード蒐集が趣味だ)
 全員が集まると〔襟日の茶会〕に移る。

◆襟日の茶会
 お茶と菓子が探索者に振る舞われ、茶会が始まる。話題は各々がどのような人となりで、仕事は何をしているのか、趣味は何かというようなところから話題を広げていくような形だ。(つまり合コンのようなものだと思えばいい)
 この場面はお互いの探索者の自己紹介も兼ねている。事前に探索者の細かい設定などは話さずにここで会話として組み込むとストーリーに入り込めるだろう。また、今後お互いに連絡を取れるように名刺の交換などを促すといい。
 会話が一段落ついたところで襟日が聞かせたいものがあると言い出す。

▼襟日のレコード
 襟日は棚から古いレコードを取り出し探索者に見せる。
「これは最近、海外のオークションサイトで手に入れた名盤なんです」
「知る人ぞ知る名ヴィオラ奏者の演奏を収めたものなのですが数が少なく長年探していたものなんです」
「素晴らしい演奏なので是非皆さんに聞いて頂きたい」
 襟日がレコードをプレイヤーに掛けると、スピーカーからはヴィオラの悲しげな音色が流れ出す。聞いていると曲調は徐々に早くなり、啜り泣くようだった音色は絶叫するような激情を伴ったものへと変化していく。

 探索者は[レコードのPOW]との抵抗表ロールを行う。(7版の場合、[レコードのPOW]と探索者のPOWを対決させる)
 ロールに失敗した探索者は、このシナリオ中〈幸運〉のロール成功率が半減する。(7版の場合、〈幸運〉の難易度がハードとなる。〈幸運〉自体の数値は変化しないことに注意)

 探索者は曲を聞いているうち次第に朦朧となり、意識が途切れる。
 気がつくと夕日が辺りを赤く照らしている。探索者は路上に立ち、襟日の家の前で解散するところだった。
「今日はとても楽しかったです。またお茶をしましょう」
 にこやかに言う襟日の目はどこか虚ろなものに見える。

 茶会は終わり解散する。探索者は各々の自宅に戻り、やがて床に就くこととなる。
 PLが襟日を疑ったり自分の体に異変が起こったのではないかと疑うのであれば、KPは「シナリオには今日はもうイベントが設定されていない」と説明し解散を促す。

◆悪夢の始まり
※この夜、探索者が眠ると夢の中で再会する。夢の場所はアザトースの宮殿となる。エーリッヒ・ツァンのレコードを聴いた探索者は夢の中で宮殿に招かれるようになった。眠るたびに悪夢は進行し、やがてアザトースとの対面を果たすこととなる。これを止めるためには起点となったレコードを破壊するしかない。

 ふと気付くと探索者全員は見知らぬ場所にいる。見たこともない石で建造された荘厳な宮殿のような、巨大な柱が何本も屹立する広間だ。そこに今日茶会で会い、その後別れたはずの他の探索者もいる。
 探索者はお互い自由に会話できる。KPは適当なところで次の描写を入れ、その後全員を起床させる。

・描写
 突然、怖気と恐怖を伴う気配を感じる。視線を向けていないはずの死角から、無数の何かが自分達を値踏みするように視線を向けている感覚に囚われる。足元から寒気がずるずると這い上がり皮膚を舐める。視界の片隅に粘液を纏った触手のようなものが見え隠れするような錯覚は、果たして本当に錯覚なのだろうか。ずるりと背後の闇が蠢き、肩に何かが触れた……。

 探索者は悪夢から飛び起きる。そこは見慣れた自分の寝室だ。寝間着が冷や汗でぐっしょりと濡れている。
 悪夢を垣間見た探索者は0/1の正気度ポイントを喪失する。


■調査フェイズ

 以下、シナリオは調査フェイズで進行する。調査フェイズの間、探索者はロールを伴わなければ自由に行動できる。ただしその行動によってロールの成否が変化するわけではない。
 KPは以下の調査フェイズの概略と調査ルールをPLに説明する

◆概略
 探索者はこれ以後、毎夜眠るたびに悪夢を見る。その度に悪夢は進行し、最終的に待っているものは破滅しかない。本シナリオの目的は、探索者の破滅を阻止するため悪夢の元凶である「襟日の持つレコードの破壊」となる。
 レコードを破壊するためには襟日の家に赴き、レコードの持つPOWと対決することとなる。ロールに成功すれば探索者はレコードを破壊することができるが、失敗した場合、再びレコードに収められたの蠱惑的な音色を聴きたいという衝動に駆られ、襟日と共に鑑賞会を行い1D6の正気度ポイントを喪失する。
 これ以後、探索者は調査フェイズを行い、対抗手段を模索していくこととなる。調査に成功すれば探索者はレコードとのPOW対決でボーナスを得られる。このボーナスを稼ぎレコードとのPOW対決を有利にすることが調査フェイズの目的となる。調査フェイズは1日を1調査ラウンドとして、探索者は自由に調査を行うことができる。
 シナリオでは分かりやすいようタイムリミットを次の日曜日とし、1週間となる7調査ラウンドを想定している。各調査ラウンドの最後に、KPは〔毎夜の悪夢〕を参照し、描写を行った後に〈正気度〉ロールを行わせる。規定の調査ラウンドが全て終了した場合、その夜は〔エンディング:恐怖のメロディを参照し、シナリオを終了させる。
 KPは調査フェイズの開始時に〔レコードの破壊〕を参照し、シナリオ目的であるレコードの破壊の成功率が現在どの程度なのかを先に計算させ、調査判定の成功ごとにこれが5%ずつ上昇していくと説明するのがいいだろう。

◆毎夜の悪夢
 このイベントは毎調査ラウンドが終了すると同時に発生する。夜間、探索者が就寝すると悪夢を見る。探索者が睡眠を拒んだとしても強烈な睡魔に抗えずに眠り、このイベントが発生する。悪夢は日を追う毎に進行し、正気度ポイントの喪失量も増加していく。描写を終えた後、KPは正気度ロールを行い、探索者を起床させ次の調査ラウンドへと移る。ただしタイムリミットとなる最終ラウンドの終了を迎えると、このイベントは〔エンディング:恐怖のメロディへと移る。
 以下は調査フェイズを7調査ラウンドとした場合の喪失量だ。もし調査フェイズが7調査ラウンドでない場合、KPは描写と喪失量の進行を調整すること。

▼描写および喪失量
(各項目先頭の数字は調査ラウンドの進行を表す)

  1. 探索者は気付けばまたあの宮殿の中にいた。不思議なことに、これが悪夢であることがはっきりと理解できる。しかし同時にこれがただならぬものであることも理解できていた。辺りを這い回る気配は昨夜よりもはっきりと感じることができる。おぞましい感覚に足がすくみ動けないでいると、宮殿の奥からフルートに似た恐ろしげな音色が聞こえてきた……。探索者は0/1D2の正気度ポイントを喪失する。

  2. またあの悪夢だ。自分の意識ははっきりとしているのに、身体が勝手に動き出す。音に導かれるように、意識とは裏腹に宮殿の奥へと足は独りでに進んでしまう……。探索者は0/1D3の正気度ポイントを喪失する。

  3. 恐ろしげな旋律がはっきりと聞き取れる。それは一つ二つではない。無数の聞いたこともない楽器の音色がそれぞれまったく異なった狂気の旋律を奏でているものの、折り重なるさざなみのような音階が混沌とした不自然な調和を生んでいる。本能的な拒否感を伴うにも関わらず、足は意志に反して先へと歩みを止めない……。探索者は1/1D4の正気度ポイントを喪失する。

  4. 意識とは裏腹に足は止まらず、一歩、また一歩と進んでいく。この先に途轍もなく恐ろしい何かが待っていると確信できてしまうのに、身体は自分の言うことを聞いてくれない。恐怖と焦燥に気が狂いそうだ……いや、こんな悪夢を見ている時点で既に気が狂っているのかもしれない……。探索者は1/1D6の正気度ポイントを喪失する。

  5. 進んだ先には一人の老人がいた。それはなんということであろう、あの襟日であった。彼は探索者へと目もくれず指揮棒を一心不乱に振り乱し、ずっと聞こえていた恐ろしい旋律を不気味なハーモニーへと導いている。その目には正気の光は既になく、青ざめた死人のような顔に恐怖と狂気の色を貼りつかせていた……。探索者は1/1D8の正気度ポイントを喪失する。

  6. 探索者は一歩、また一歩と不気味な音色に導かれるように宮殿内を進む。その左右では、奇怪な触手をわななかせる醜悪なヒキガエル、或いはぶよぶよと脹れたイカやタコのようにも見える異形の神々が無数に列を成し、銘々がねじくれた楽器で恐ろしい響を奏でている。そうして立ちはだかる巨大な金属製の門の前に辿り着き、門は独りでに軋みを上げて開いていく……この先は見てはならないと本能が悲鳴を上げる。絶対に見てはならない……! 探索者は1/1D10の正気度ポイントを喪失する。

  7. 〔エンディング:恐怖のメロディに移る。

 

◆調査ルール
 各探索者は、1調査ラウンドに1回、「調査判定」「支援判定」「レコードの破壊」のいずれかを行うことができる。各ラウンドにどの探索者から行動を行うかについては特に制限はない。
 調査判定には〈アイデア〉〈知識〉〈幸運〉以外の全ての技能を使用可能となる。ただし調査判定に使えるのは、探索者それぞれが1技能につき1回までで、ロールの成否に関わらず再使用できない。調査の結果手に入れた情報は、探索者のレコードに対する恐怖心や忌避感を煽り、それこそがレコードの魅了に対抗するための手助けとなる。襟日がレコードを手に入れた後に見せるようになった眉をひそめるような言動や、レコードにまつわる忌まわしい過去が妥当だろう。例えば「レコードの前の持ち主は著名なピアノ奏者だったが、ある時から何かに脅えるような言動が増え、最終的にコンサートの楽屋で首を吊って自殺した。その遺品がオークションに掛けられたのだ」といったものだ。また、レコードに収録されたヴィオラ奏者「エーリッヒ・ツァン」の奇怪な人生についての逸話も情報内容として妥当だろう。

・探索者が発狂した場合
 直前の〔毎夜の悪夢〕で探索者が発狂した場合、その調査ラウンドのロールの成功率を-20%する(7版の場合はペナルティ・ダイスを1つ受け取る)。この成功率への修正は累積せず、次の調査ラウンドに持ち越されない。
 もし他の探索者によって〈精神分析〉が試みられ成功したのであれば、この修正は打ち消される。当然ながらこのとき〈精神分析〉を行う探索者はこのラウンドに他の行動を行えない。

▼調査判定
 PLは探索者がどのように調査を行い、どの技能でロールを試みたいかをKPに提案する。PLのアイデア次第で全ての技能が調査に妥当性を持つのだ。
 ただしKPは、PLの提案が妥当かを判断する必要がある。特に他の探索者が既に行った調査に酷似したものは却下すべきだし、ロールする技能が妥当なものでなければKPは他の適切な技能でのロールを指示する。この調査ではプレイヤーの独創的な調査が求められる。右倣えの調査では面白くないからだ。(このこともPLに伝えること)
 ただし〈図書館〉については必然的に「図書館・インターネット・新聞などで有益な情報がないか調査する」という内容になるため、独創性は不要となる。この技能は、調査シチュエーションの提案に困ったときに使えるワイルドカードのようなものだと説明する。

・調査判定の結果
 このシナリオでは探索者の調査判定の成功回数を記録する(以下「【成功数】」と記述)。成功した回数だけ忌まわしいレコードとのPOW対決にボーナスが入るのだ。レコードとのPOW対決の際、探索者は[POW+【成功数】]をレコードのPOWと対決させる。(7版の場合、[POW+(【成功数】×5)]となる)
 調査判定がスペシャル(7版の場合はイクストリーム成功)の場合、【成功数】に+1ではなく+2する。決定的成功(7版の場合はクリティカル)の場合、【成功数】を+2D3する。7版の場合、ハード成功の場合は〈幸運〉ロールを行い、成功した場合は成功ランクに関わらず【成功数】に+1する(〈幸運〉成功率が下がっている場合に注意)。
 調査判定が致命的失敗(7版の場合はファンブル)だった場合、その探索者は次の調査ラウンドで行動が行えない。
 なお【成功数】は全探索者で共有する。これはセッションの円滑化を目的とするためであり、探索者同士が連絡を取り合っていなくても適用される。もちろんセッションのストーリー進行上はお互いにある程度は連絡を取り合い、情報を共有する方が妥当性が増すだろう。

・調査の例
 これらは技能を使った調査の例だ。PLがどのように提案すればいいのかが分からないといった場合にはKPはこれを提示する。ただし一度提示した例は、同じような内容の調査を探索者が真似することを禁じること。例を挙げれば挙げるほど制限が大きくなるため、このことはPLに了解を得ること。

〈芸術(ピアノ演奏)〉…この技能は探索者のピアニストとしての技量や地位を表す。探索者には同じ業界にいる襟日のよくない噂が入るだろう。
〈コンピューター〉…襟日がレコードを落札したオークションサイトにハッキングを仕掛け、個人情報を引き出す。その中には恐ろしい事実が隠されているに違いない。
経理…上記〈コンピューター〉の成功後、手に入れた情報を精査する。襟日が支払った大金が、その後もしかしたら邪神を崇めるカルト集団へと流れているかもしれない。

・調査の提案が秀逸だった場合
 KPは、PLの提案が特に秀逸だと判断したとき、その調査判定の成功率を+10%させてよい。(7版の場合はボーナス・ダイスを1つ与える)
 ただし、このボーナスが与えられるのは1人につき1回までとする。また無闇に与えてはならない。セッションを盛り上げる素晴らしい提案には報いるべきだが、口の上手いプレイヤーがボーナスを独占するようなことがあってはならないからだ。基本的にこのボーナスは与えないつもりでセッションに臨むのがいいだろう。

▼支援判定
 探索者は、そのラウンドの他の探索者1人を対象に調査判定の成功率を上昇させる支援判定を試みることができる。支援判定を行う場合、対象の調査判定より前に〈アイデア〉〈知識〉〈幸運〉のいずれかに成功すると、対象が次に行う調査判定の成功率を+10%する(7版の場合、対象はボーナス・ダイス1つを得る)。この際、成功ランク(スペシャルや決定的成功、7版の場合はハード成功やイクストリーム成功)によってロールへの補正は変動しない。支援判定が致命的失敗(7版の場合はファンブル)だった場合、対象が次に行う調査判定の成功率を-10%する。

▼レコードの破壊
 探索者は調査判定や支援判定を行う代わりに、調査ラウンドの行動として「レコードの破壊」に挑戦することができる。探索者が襟日の家に赴き、もう一度あの素晴らしいレコードの音色を聴きたいなどと話せば襟日は喜んで家に招き入れる。来客の歓待に襟日がお茶を準備しに席を外すなどしたときにレコードの破壊を試みることができるだろう。
 レコードの破壊は、探索者は[POW+【成功数】]をレコードのPOWと対決させる。
 ただしこのとき、ロールの結果が[96~100]であれば成功率に関わらず失敗となる。KPは、調査フェイズの開始時にレコードのPOWとの対決が今どれだけの成功率なのかを先に計算させ、調査判定の成功ごとにこれが5%ずつ上昇していくと説明するのがいいだろう。

・使用システムが7版の場合
 7版の場合、レコードのPOWとの対決は行わず、KPはダイスロールを行わない。結果は探索者のロールが成功したかによってのみ判断する。探索者のロール成功率は[POW+50+(【成功数】×5)-レコードのPOW]となる。

・ロールに成功した
 対決に勝利すれば、探索者はレコードを破壊することができる。その際、できれば「よくもこんなキ○ガイレコードを!」と叫んでほしいが、別にKPはこれをPLに言う必要はない。あくまでシナリオ筆者の願望だ。(意味が分からない人はアニメ『チャージマン研』第16話「殺人レコード恐怖のメロディ」を見よう)
 レコードを破壊した直後、〔エンディング:狂騒の末路〕に移る。

・ロールに失敗した
 探索者はレコードの魔力に魅了され、このような素晴らしいものを破壊するのは惜しい、もう一度レコードの素晴らしい音色を聴きたいと思ってしまう。襟日と共にレコードの音色に耳を傾け、1D6正気度ポイントを喪失する。その後、虚ろな目で幸せそうな顔を浮かべながら帰宅する。


■エンディング

 以下はシナリオのエンディングである。各エンディングの分岐は以下を参照する。

・レコードの破壊に成功した→〔狂騒の末路〕
・規定の探索ラウンドが経過した→恐怖のメロディ

 

◆狂騒の末路
 レコードの破壊に成功した場合、このエンディングが発生する。

 レコードが砕ける直前、襟日が部屋に戻ってくる。レコードの砕け散る瞬間を目の当たりにした襟日は愕然とし、その場に崩れ落ちる。
 散らばったレコードの破片が独りでにカタカタと震え、そこから黒い靄のようなものが立ち上る。それは瞬く間に膨れ上がると、狂気と嘲笑の色を伴う忌まわしい笑い声と共に暴風となって荒れ狂う。
 狂気の奔流に呑まれた探索者は、1D3/1D20の正気度ポイントを喪失する。
 やがて黒い靄は夢であったかのように消え失せ、部屋には破壊の痕跡と呆然とする襟日だけが残されていた。レコードの残骸はどこにも存在しない。

 以上でシナリオを終了する。

恐怖のメロディ

 規定の探索ラウンドが経過しレコードの破壊に失敗した場合、このエンディングが発生する。このエンディングはバッドエンドである。
 このエンディングでは、探索者は宮殿の最奥で渦巻くアザトースを直視してしまう。

 その夜、探索者が眠ると、悪夢はついに最終局面を迎える。
 大きな銀の門が悲鳴のような軋みを上げて打ち開かれる。その先にいたのは、口にするのもはばかられる、この世のありとあらゆる恐怖と狂気を凝り固めたような混沌とした存在だった。不定形の影は、時間も空間をも超越した全宇宙の中心としてそこに鎮座し、奈落の底で忌まわしいフルートの音色に揺らめきながら渦巻いていた。
 この狂った世界の中心を直視した探索者は1D10/1D100の正気度ポイントを喪失する。

 翌日、襟日が自室で首を吊ったというニュースが報道される。彼が持っていたレコードの行方は杳として知れない。だがあのレコードはどこかでまた犠牲者を生んでいるだろう。
 探索者の正気度ポイントが残っていた場合、悪夢を見ることはなくなる。しかし恐らく、眠る度にまたあの宮殿に招かれるのではないかという恐怖心が心の奥深くに刻み込まれるだろう。

・正気度ポイントがゼロになる
 探索者の正気度ポイントが全て失われた場合、その探索者の精神は悪夢に囚われたまま「外なる神の従者」としてアザトースの眠りを慰撫する楽団へと組み込まれることとなる。現実世界では怪死や失踪、あるいは精神崩壊を起こし狂気のまま精神病院から二度と出ることはないだろう。

 以上でシナリオを終了する。


■セッション終了処理

 シナリオが終了した後、セッションの終了処理を行う。
 探索者へのシナリオクリア報酬として正気度ポイントの回復を行う。エンディングが〔恐怖のメロディ〕の場合、正気度ポイントの回復は行われない。

◆正気度回復
 シナリオをクリアした探索者は2D8正気度ポイントを獲得する。さらに襟日が生存していた場合、1D3正気度ポイントを獲得する。またレコードを破壊することに成功した探索者は、追加で1D6正気度ポイントを獲得する。
 KPは面白い技能の使い方を提示したり、面白い調査シーンを提案したPLに追加で1D3正気度ポイントを与えてよい。

◆その他の処理
 〈クトゥルフ神話〉技能を3%上昇させる。
 襟日のレコードを聴いたことで減少した〈幸運〉への補正を元の値に戻す。
 経験ロールを行う。「経験のチェックマーク」(『6版ルールブック』 P59)/「経験の報酬:探索者成長フェイズ」(『7版ルールブック』P90)を参照すること。
 また、この事件を通し、探索者は情報収集に慣れただろう。またPLもとんちを効かせる能力が高まっただろう。〈言いくるめ〉〈図書館〉〈母国語〉 に一回ずつの経験ロールを行う。これらは通常の経験ロール処理とは別に行ない、それと重複しても構わない。

 


 

 面白かったり変なところがあったらコメントとかでお願いします。

 

カッコウの揺籃 怪盗周りの設定やら伏線について

怪盗ウィッチの正体が判明したところでその辺りについて
思いっきりネタバレなのでAct.11視聴後で


◆そもそものコンセプト時点で
継弓は茜と対になるキャラクターで、茜のコンセプトが「漫画の名探偵をクトゥルフ神話TRPGに放り込んだら」だった。
継弓はホームズに対するワトソン役であり、また同時に探索者=主人公として強力な個性を付与するため「探偵のライバルとしての怪盗」という役割を持つことに。
つまりコレ、コナンVSキッドです。キッド様嫌いな女子なんておらんやろ。

造形モデルの一つである怪盗キッド(まじっく快斗)は、消えた初代怪盗キッドだった父親・黒羽盗一の行方を追って息子・黒羽快斗が二代目怪盗キッドとして立ち回る、というもの。
もう一つの大きなモデル、怪盗シンドバッド(神風怪盗ジャンヌ)は、主人公である日下部まろん=怪盗ジャンヌの強力なライバルとして立ち回るが、その正体はクラスメイトのどこか謎めいた少年・名古屋千秋だった。敵として立ち回る千秋だが、その真意はまろんを守るためのものだった。

この二人の怪盗の特性やらフランとぬえの夢男子成分やらを混ぜ混ぜした結果、ウィッチが誕生した。
最初からコンビ打ちになる前提なのでこの二人の趣味が多分に入っている。
キッドベースはぬえのものだが、読書家、漫画好きという設定が付与されてる拙作のフランドールさんは例に漏れずりぼんっ子なので神風怪盗ジャンヌがそれに次ぐ強い個性としてチョイスされた。

継弓という名も、弓=怪異殺し=探索者である姉=初代ウィッチに対しての、二代目。
弓は怪異を殺すための武器。ウィッチという名と仮面を継承した形になる。


◆伏線について
一番説明しやすいのはAct.00 [SIDE: Prelude]ラストでの茜との会話シーン。


ウィッチに発砲されたという話を聞いて心配している、風にも見えるが。
実際は継弓自身がウィッチなので、傷を心配している。骨にヒビとか入ってないよな、と。茜自身ピンピンしてるのでそこまで不安ではないが。


脇腹をノータイムで触りに行っている。
茜は脇腹に命中したとは話したものの、どちらの脇腹を、とは説明してない。


左右二択ではあるのだが、どちらに当たったかは実際に見ていたので分かっている。


目を細めて少し安心したような表情。
もしからかっているなら目は閉じてヤレヤレというような表情になる。




もう一点、同じシーンの頭、茜からことの顛末を話された直後。
継弓の負け惜しみであり、同時に「茜が勝った」ことにしてはいけないのでこの発言。
怪盗は探偵に対しての強力なライバルであり、目標として立ちはだかり続けなければならない。継弓は茜に勝ち続けることを強いられている。

じゃあどうして勝ち続けられるのかというと……。


活劇シーンでのウィッチのセリフ。
お互い一挙手一投足が分かってしまうほどの関係。茜にとってそれは継弓意外にありえない。

継弓は絶対に決着が付かないと確信している。なぜなら茜の行動は全て理解できるのだから。
他は分からなくても茜なら気付く逃走先のヒント。ギリギリで躱せる攻撃。同時に自分への攻撃は絶対に見切ることができる。どの位置に攻撃が来るのか分かっているのだから。茜ならこう来る、絶対にそうするという確信がある。

それを自覚しているウィッチと、自覚していない茜。
どちらが有利かは明らかで、必ず逃げる隙が生まれてしまう。


少し遡って、ウィッチ戦の前、継弓がウィンドミルに勉強しに来たシーン。


茜から「継弓は大学行ってやりたいこと見つかった?」と問われての返答。
大学生としての蓮華に対してと、ウィッチとしての蓮華に対してのダブルミーニングの回答。
ウィッチとしては劣化コピーでしかないという自覚があって、けれどそれをどうこう言わずともいいのでは、という裏の意味。蓮華になれるわけではないし、目的はウィッチのコピーとして振る舞うこと。


苦笑と自嘲の表情。自分と茜を溺愛している蓮華は継弓の選択を知ってどう言うだろうか。
これが蓮華に褒められる選択だったとは言い切れず、継弓もまだ迷っている。




Act.04の相川研究室での昼食シーン。
倉持がウィッチの記事を新聞で見つけたときの反応がこちら。


茜の宿敵で、つい一昨日は茜に銃を向け傷を負わせた相手。
それに対してこの軽い反応。少しは嫌な顔をしろ。

無関係であろうとするあまり興味ない風を装いすぎている。
動画的な分かりやすさを重視しているのでわざと露骨にしている面もあるのだけど。


一方で相川先生はこの反応。怪盗なんてセンセーショナルな話題、興味の少しはあるだろうと。
このときの相川の問いは、無関係な倉持がどれだけウィッチについて把握しているかという市場調査が狙い。
継弓は「そこほじくり返すのかよ……」と嫌そうな顔をしてる。



話し終えてからの継弓。安心したような、少しドヤ顔のような。




「探偵なら――何とかしてくれるのかな」
相川の発言は、茜がウィッチ=蓮華を捕まえてくれるだろうという継弓に対しての言葉。
それに対して継弓は優しげな表情になっている。



◆おまけ デザイン

ちなみにウィッチのデザインには、蓮華、継弓、茜に対応する白蓮、ぬえ、フランドールの意匠が入っている。

マントの下のこれ、ライダースーツなのよね。



【ハウスルール】武道(立ち技系)(組み技系)の変更点と、第三の武道

穂積のキャラシ紹介のところで組み技系の詳しい解説は別記事って書いてたのに作ってなかったのにやっと気付いた。
ということで武道3種の解説です。

◆概要
・武道(立ち技系)の派生技「ラッシュ」の効果変更
・武道(組み技系)を「組み技系“柔”」「組み技系“剛”」の二種類に分化
・武道(軽業系)の追加

立ち技のラッシュが強すぎるため組み技を強化、また第三の武道である軽業系を追加した。
これに伴いラッシュも記述を変更。若干の強化を行ったがあまり変わっていない。


■既存技能の変更点

◆武道(立ち技系)
▼ラッシュ
この技能が60%以上ある場合、使用可能な派生技「ラッシュ」の効果を以下に変更する。

元:ラウンド終了時、〈武道(立ち技系)〉+〈こぶし/パンチ〉または〈キック〉の追加攻撃1回が可能。
新:ラウンド終了時、〈武道〉による追加攻撃1回を行うことが可能。このとき「ラッシュ」および「フェイント」は宣言できない。

▼解説
追加攻撃の際に派生技を宣言できるようになった。これにより「ラッシュ→サルト」「ラッシュ→タックル」といったコンボも可能に。まるで格ゲー。
ただし同じ立ち技系派生技は宣言できないため、複数の武道を習熟させる必要があり大量の技能ポイントが必要となる。実質的にNPC専用。

◆武道(組み技系“柔”)
この技能が60%以上ある場合、「タックル」ではなく「柔投げ」が使用可能となる。
これにより派生技は「サルト」「柔投げ」となる。

▼柔投げ
サプリメントクトゥルフと帝國』記載のものを元にルール定義を明確化した)

・〈武道(組み技系“柔”)〉での「受け流し」に成功したときに宣言できる。
 この行動はアクションとして扱い、ラウンド中にアクションを行っている場合宣言できず、宣言した場合自分の行動順でアクションを行えない。
 ロールに成功した場合、1D6+dbのダメージを与える。さらに相手は〈ショック〉ロールを行い、失敗した場合「気絶」する。

・この技は〈武道(組み技系)〉でのみ受け流せる。
 「柔投げ」に対する受け流しで、さらに「柔投げ」を宣言することはできない。

・メインプロセス開始時、「後の先」を宣言できる。その場合、即座にメインプロセスを終了する。
 このとき、行動済みになるがラウンド終了まで「柔投げ」を宣言できるようになる。

▼解説
受動の組み技。カウンター技の柔投げが使用可能になる。
穂積の持つ〈武道(合気道)〉はこちら。

◆武道(組み技系“剛”)
この技能が60%以上ある場合、「タックル」ではなく「タックル(改)」が使用可能となる。
これにより派生技は「サルト」「タックル(改)」となる。

▼タックル(改)
サプリメントクトゥルフ2010』記載の強化版)

・〈頭突き〉との組み合わせロールを行う。成功した場合、2D4+dbのダメージを与え、相手を5mノックバックさせる。
 相手はスタン状態となり、さらに相手は〈敏捷〉ロール(DEX×5)を行い、失敗した場合「転倒」する。
 その場合、さらに〈ショック〉ロールを行い、失敗した場合「気絶」する。

・この技は〈武道〉でのみ受け流せる。
 受け流し可能なのが〈武道(組み技系)〉のみでないことに注意。

▼解説
能動の組み技。タックル(改)は『帝國』の〈武道(相撲)〉の持つ「ぶちかまし」を参考に調整した。
タックル(改)はスタン、ノックバックに加え、ロールを経由するが転倒、さらに気絶まで派生する強力なバステ押し付け効果を持つ。



◆武道(軽業系)

・この技能は〈武道(組み技系)〉と同様に扱うことができる。
 ただし〈武道(組み技系)〉として攻撃に使用することはできない。

・通常の〈武道〉のように近接攻撃のダメージを上昇させることはできない。

・あらゆる攻撃に対し、〈回避〉と同じ効果を持つ受け流しとして使用することができる。
 これは銃器や呪文に対しても有効。ただし回避できない攻撃や状況の場合は受け流しを行うことができない。

・「転倒」したときにこの技能に成功した場合、即座に「転倒」状態から復帰することができる。

・技能が60%以上の場合、派生技「跳び蹴り」、「跳び関節」を使用可能。

▼跳び蹴り
 射程:〈跳躍〉依存

・〈跳躍〉との組み合わせロールを行う。
 成功した場合〈キック〉または〈頭突き〉ロールを行い、成功時2D4+db/失敗時1D4+dbのダメージを与える。

・この技は〈武道(軽業系)〉以外による受け流しを行えない。

▼跳び関節
 射程:タッチ

・〈跳躍〉との組み合わせロールを行う。
 成功した場合〈組み付き〉状態になる。
 このとき[自分SIZ+2:相手STR]の抵抗ロールを行う。成功した場合、即座に両者「転倒」状態になる。

・もし窒息させたりダメージを与えたい場合、通常の組みつき状態と同様にアクションを消費して〈組み付き〉ロールを成功させる必要がある。

・この技は〈武道(組み技系)〉以外による受け流しを行えない。(〈武道(軽業系)〉は可能)

▼解説
継弓の持つ第三の武道。コンセプトは「回避特化」「武道殺し」
立ち技、組み技と異なり、マーシャルアーツのような素手攻撃力の増加が行えない。その代わりにリアクション可能なあらゆる攻撃に対して〈回避〉相当の効果を持つ「受け流し」が可能。ロールさえできるなら拳銃だろうが呪文だろうがクリーチャー攻撃だろうが受け流せる。
そして最も凶悪なのが、あくまで「受け流し」であるためアクションを消費せずに行えるという点。攻撃と両立可能なのだ。

派生技は攻撃用のもの。立ち技の特性を持つ「跳び蹴り」と、組み技の特性を持つ「跳び関節」の2種。
どちらも〈武道(軽業系)〉と〈跳躍〉の組み合わせロールから別の技能に派生し、受け流しが困難という特徴を持つ。特に両方とも受け流しが行えない立ち技系へのキラースキルとなっている。
反面、派生技を使いこなすには、軽業系、跳躍と共に他の技能を高レベルで習熟させる必要があるため使いこなすのは難しい。

「跳び蹴り」は〈キック〉〈頭突き〉に成功することで攻撃力を増加させる。単純だが強力で、高ダメージを安定させることができる。dbが1D4ある場合、威力は3D4となり期待値は7.5点。対人であればショックロール圏内の威力を期待できる。
また射程が跳躍依存であるため、通常の移動に加えてさらに移動しながらの攻撃が可能。機動力に優れた攻撃法となっている。

「跳び関節」は組みつき状態と転倒のバッドステータスを押し付ける。転倒時は異なるステータス同士の抵抗表ロールで、使用者には10%分のボーナスが得られる。
ただしあくまで組みつき状態となるだけで、直接のダメージを与えるにはここから〈組みつき〉ロールに派生する必要がある。





【探索者シート】木下継弓

探索者シート、第五回。
もう一人の主人公、つぐみんです。
【注意】Act.11視聴後推奨



木下継弓(きのした・つぐみ) 
PL:封獣ぬえ
21歳/男性 大学生/怪盗(犯罪者/BRB
素直じゃない幼馴染みのお兄ちゃん/二代目“怪盗ウィッチ”

探索回数:0回



◆キャラクター像

皮肉屋だけど芯のところではめちゃくちゃ優しい、ただのイケメン。
キャラクターコンセプトは“少女漫画に登場するカレシ役”。

家族との別れを二度も経験しているという中々にハードな背景を負った青年。
パンクロッカーみたいなペイントを入れているが本人はオシャレのつもり。中二病ではない。
探索者内では「暗躍・潜入工作」と共に「派手なスタントアクション」を担当。茜とセットでもう一人のPC1。
最も事件の真相に近い位置からスタートするものの正体を隠しながらの立ち回りを強制される。

造形イメージはイケメン怪盗として黒羽快斗=怪盗キッド(まじっく快斗/名探偵コナン)と名古屋千秋=怪盗シンドバッド神風怪盗ジャンヌ)。
またアーティファクトの効果で正体を隠す怪盗ということで八咫鼎=怪盗トリニティ(Ziggurat)がある。こちらの原作はクトゥルフ神話要素も絡んでいる。

◆ステータス






探索者作成時に能力値ポイント振り分けルールを使用しているため全体的にやや高めとなっている。
振り分けルールでリビルドしたため企画初期の設定からは若干変動。INT最大値の18だったが低下した。
そこそことイケメンなのだけど第一印象が軽薄すぎて評価が下がる、という設定。実APPは13くらい。


▼技能
ファンタジーRPGでいうところのシーフ的なビルド。アクション要素の高い技能で纏まっている。
単独行動のエフェクトを持つため、隠れる、忍び歩き、跳躍、変装とスニーキング重視な型となっている。
また拳銃、キックと共にハウスルール技能〈武道(アクロバット)〉を持ち戦闘面でも攻守に優れた性能を発揮する。

〈偽造〉は日本未訳サプリに掲載されている技能。人物を対象とする変装の互換、物品版として設定され、真贋感知にも機能する。
同様に〈変装〉自体も変装へのカウンターとして機能するように設定されている。

弱点は取得技能が平時には使い勝手の悪いものばかりになっているため単独行動が苦手であり、コンセプトが弱点。真のコンセプトはこういった二律背反となっている。

〈武道(軽業系)〉の詳しい解説は個別記事にて。

▼エフェクト
・【得意分野:噂話】
・【得意分野:直感】
・【特徴:両手利き】
・【神秘の継承者:無貌祭司の仮面】
・【狂気:共依存
・【暗躍】

『ガスライト』特徴ルールによって【特徴:両手利き】を取得している。これについて『ガスライト』や『BRB』には詳細なルール定義がなかったが、「二丁拳銃」ルールの項目に対し適用することで具体的効果を規定。
二丁拳銃使用時には「未照準」ルールを適用することとなっているが、これを無効化する。また「二丁拳銃が対象であれば二刀流も対象となる」という見做しルールにより、あらゆる双武器による通常の2倍回数の攻撃が可能となった。

【神秘の継承者】で取得した「無貌祭司の仮面」はウィッチが着けているもの。効果は着用時に〈変装〉ロールのスペシャルと同様に扱うというもの。このとき探索者シートを参照するあらゆる効果から逃れることができるため、ルール的に継弓の名前や背格好を参照できず正体が保護される。ただし小石川瞳の持つ【狂気:全盲】は変装そのものを無効化するため、唯一の対象外となる。
アーティファクトの使用コストとして、次のシーンでの行動が行えなくなる。動画内で「また倒れていた」と言っていたのはコレ。
アーティファクト自体は、かつて中欧でシャーマンが着けていた祭事用の仮面。神霊の代弁者として共同体での人物個人としての役割を伏せることで神の依代となっていた。

【暗躍】は狂気とセットとなっているエフェクトのため後述する。


◆【狂気:共依存】(対象:富良野茜)

児戯めいた、けれど慟哭のような祈り
あのとき二人で交わした約束が
世界と繋ぐ、たった一つの細い糸

希望は確かに存在するのだという
紛れもない証拠が目の前にある
それは地獄に伸ばされた救いの手
一度縋ってしまえばもう放せない

それは互いが互いであるために
疵を舐めあう、ハリネズミのジレンマ


▼効果
・依存対象がシーンに登場している場合、全ての判定に+5%する。

・依存対象がシーンに登場していない場合、全ての判定に-5%する。

・依存対象が〈ショック〉ロールを行う、またはダメージにより気絶した場合、1/1D6の正気度ポイントを喪失する。
 依存対象が「死亡」した場合、1D10/1D100の正気度ポイントを喪失する。

▼解説
単独での効果は単純明快な成功率増減。このエフェクト単体では茜と分かれて判定するメリットが存在しないため強力なバフ効果として機能する。
デメリットである正気度ポイントの減少は、茜が気絶した場合にかかる。継弓自身が戦闘時は前線で立ち回り、また勝人の【狂気:メサイアコンプレックス】で茜を守りやすいためパーティの連携でフォローしやすい。
茜の死亡時に受けるGOO直面級は継弓を共倒れさせるというもの。とはいえPC1である茜の死はキャンペーンシナリオでの敗北と同義であるため、そこまで気にする必要はないかもしれない。

◆【暗躍】

▼効果1
・1シナリオ中1回、調査判定またはスポットシーンの直前に宣言する。
 その調査判定またはスポットシーンの「制限」を無視し、また成功率のマイナス効果を受けない。
 この効果によって発生した調査判定またはスポットシーンで、「無貌祭司の仮面」を装備している場合、ロール全ての成功率に+10%する。

・この効果を宣言したとき、自身の持つ暗躍カウンターを全て取り除く。
 その調査判定またはスポットシーンのロール全ての成功率に+[取り除いた暗躍カウンター×5%]する。
 この効果によって上昇する成功率は95%を上限とする。

▼効果2
・1シナリオ中1回、スポットシーンに登場してる際に宣言する。シーンから退場する。
 このとき、宣言した時点で解決されていない処理を全て中断し、棄却する。

▼効果3
・【狂気:共依存】の依存対象と同じシーンに登場せずにロールするたび、「暗躍カウンター」を1つ得る。


▼解説
もう一つの狂気相当エフェクト。
狂気エフェクトではないが【狂気:共依存】および【神秘の継承者:無貌祭司の仮面】とセットになることで真価を発揮する。

効果1は単独でスポットシーンを様子見してくるエフェクト。このとき「無貌祭司の仮面」を装備している場合、つまりウィッチモードだと成功率のブーストがかかるため様子見ついでにいくつかのロールをぶち抜いてから、PLに対しどの技能のロール成功が必要かという情報を引き抜くことができる。スポットシーンの突破に失敗しても対策した探索者が再突入できる。
成功率減少の打ち消しは非装備状態でも適用される。動画では表記順序が悪かったと反省。

「暗躍カウンター」を消費することによって強力なブーストを掛けられるため、シナリオ序盤はカウンター稼ぎに茜と別行動を取りたい。しかしそうなると【狂気:依存症】のペナルティを被ってしまうため乱発がし辛い。序盤に使用してしまうと終盤の難しいスポットシーンへの強力な切り札としての力を失い、また成功率ブーストも弱くなるというジレンマを抱えている。
なおエフェクトの使用はアクションではないと定義しているため、効果1の起動によるスポットシーンではアクションを消費せず起動可能だが、「無貌祭司の仮面」の効果によってそのラウンドでの行動が行えなくなる。

効果2は単独行動時における緊急離脱用のもの。処理を中断して退場するため、未解決の受けるはずだった処理を全て棄却することができる。ダメージロール後に結果を見てからHP減少を適用する前に宣言するとダメージそのものから逃げることができる。
ただしスポットシーンの連続したロールの場合、途中で宣言すると以後のロール内容を確認することができない。


これら複数のエフェクトが複雑に絡み合ったデータ運用となっている。
一人だけ別ゲーのようなルールでの立ち回りで茜以上に処理が重い。



【探索者シート】富良野茜

探索者シートの四回目。
ようやっと主人公です。



富良野茜(ふらの・あかね) 
PL:フランドール・スカーレット
18歳/女性 高校生(私立探偵/2015)
自称“名探偵”

探索回数:0回



◆キャラクター像
高校生探偵という漫画から抜け出てきたような存在。
キャラクターコンセプトは“出るジャンルを間違えた名探偵”。

割と我の強いクラスの中でも問題児として認識されている少女。本人に自覚はない。
探索者内では「現場調査・実働」を担当。同時にPC1として主人公でもある。
事件の度に何故か偶然現場に居合わせて、しかも解決してしまうというフィクションの星に生まれてきた少女。

造形イメージは自覚あるメタ探偵として古戸ヱリカうみねこく頃に)。

◆ステータス




新規探索者かつ学生なのでステータスは低め。
ただし能力値ポイント振り分けルールを使っているため全体総量としては平均をやや上回る。
EDUは「高校生探偵」にするため年齢制限ギリギリの12まで下げ他に回し、APPも初期の設定より高くなっている。
同時にSIZもかなり小柄で劇中メインキャラでは最小。勝人と並ぶと身長差が凄い。


▼技能
オーソドックスな探偵型と呼べる振り分け。言いくるめ、目星の2つを軸に現場で立ち回る事を想定している。
鍵開け、聞き耳、追跡をサブウェポンとして、特徴によって上昇した多様な学術系技能を振り回す。

一方で現場第一主義とも言える振り分けによってデータ収集はからきし。この辺りは長野の技能と正反対となっている。

▼エフェクト
・【得意分野:噂話】
・【得意分野:学問】
・【特徴:科学的精神
・【探偵権限】
・【狂気:エニグマフィリア】

新規探索者の二人は継続探索者に比べどうしてもステータスが低くなってしまうため特徴ルールを適用している。また作成段階で「幕間の成長」5回を付与。これでも見劣りするのだが。
【特徴:科学的精神】により技能面での弱さをフォローできた他、〈アイデア〉の上昇により狂気エフェクトとのシナジーも発生した。ちなみに実際にダイスを振って実際に出ました。

【探偵権限】は〈芸術(探偵)〉の自動スペシャルに相当。使用状況が限られるため他のロール1回成功に相当する【警察権限】や【資産家】に比べ成功ランクが1段階高くなっている。
状況さえ噛み合えば場合によってはシナリオの記述にすら干渉する大札ではあるが、同時に使い勝手は非常に悪い。セッションでは重要な判定は後になるほど出てくるが、その頃には使えなくなっているというジレンマを抱えている。

◆【狂気:エニグマフィリア】

──私は無敵のヒーロー
どんな難事件だって解決してしまう
最強の存在……“名探偵”

少女の淡く幼い憧れは
ある事件を切欠に結晶化する
信仰を越え狂信の域にまで達した願いは
脆弱な心を縛りつける強固な鎖となる

──魔法など、存在するはずがない
探偵に解けぬ謎など、存在しないのだから


▼効果
・探索者の創造時、〈芸術(探偵)〉(5%)を上昇可能。

・正気度喪失の際、〈アイデア〉ロールを行なう。
 成功した場合、正気度喪失値を半減(切り捨て)する。
 本来喪失するはずだった軽減分の正気度喪失値は喪失累積値として別個に数えておく。これはシナリオを跨いで累積する。

 〈アイデア〉ロールに失敗した場合、POW対喪失累積値の対抗ロールを行なう。
 これに成功した場合、POWの成長判定が発生する。
 これに失敗した場合、このエフェクトと【探偵権限】は失われ、喪失累積値点の正気度を失う。

・ロールプレイ強制「謎を解く事に執着する」「自身が名探偵であると妄信する」「超常現象を認めない」

▼解説

正気度喪失に対する強固な防御能力となるエフェクト。
フランドールのPCとしては「籠ノ鳥」のフランシスからは一転、非常に発狂し辛い造詣となっている。
喪失値を一時的に後回しにすることで一時的狂気から逃れ、同時にSP減少による成功率低下を軽減する。
POW判定を経由するため、これに成功するとPOW成長判定に派生する。喪失累積値が5以下であれば抵抗表ロールは自動成功となるため、この段階では〈アイデア〉に失敗した時点でPOWの成長判定が確定する。

ただし喪失累積値はシナリオを跨いで維持されるため、ツケを払う場面は必ずやってくる。理論武装のダムが決壊したとき、直面する狂気の奔流に耐えられるはずもない。

処理が非常に重く、実際に扱うには複雑すぎるため、架空卓ならではのデータとなっている。



カッコウの裏話 キャラや固有名詞の名前(2)

中盤に入ったので区切りと言うことで。
街の住人と黒幕勢ですね。

Act.09で明言していますがOPでも出てきた四人はニャルラトテップモチーフ。
紅魔館の妖怪連中(人間である咲夜とEXボスであるフランドールを除いたもの)となっています。
甘栗さんとの開発コードはニャルテット。


■ニャルテット



赤城麗美(あかぎ・れみ/レミリア・スカーレット/赤の女王)

赤城…赤の女王とレミリアから。イメージそのまま。
麗美レミリアのもじりと、字面も妖艶な魔性の女である両者を意味して。
赤霧を拠点とするグループ企業の中枢「赤城重工」の社長夫人であり、同時に子会社「AKAGI技術研究所」の社長。金持ち、天才、美女と、欠点がないのが欠点な才媛。レミリア……お前……。
敵対勢力としては経済力と影響力を担当。赤霧に住んでいて赤城グループの影響を受けない者はいないほどなので直接対立すると一瞬で潰される。
造形モデルは女吸血鬼の代名詞でもあるカーミラカーミラ)と、毒婦、特にセレブ階級のアーキタイプ



張紅美(チャン・ホンメイ/紅美鈴/膨らんだ女)

膨らんだ女→張。紅美はそのまま紅美鈴から。
ストレートすぎるので特に語ることがない。聞いたところによると中国人としてはやや時代がかった名前のような印象らしいです。
クトゥルフ神話TRPGでは神話カルト扱いされてる三合会の一派「紅夢会」の幹部。日本支社長を名乗っていますが実質的に本国から派遣された現地指揮官です。
敵対勢力としては暴力と犯罪組織を担当。彼女自身も劇中での個人戦闘力最強キャラとなっています。直接戦うことは死を意味する。
造形モデルは張維新(BLACK LAGOON)、バラライカBLACK LAGOON)。あとイメージに姫将軍というのも。
最初期案ではもっとチャイナ娘みたいな感じだったんですが、一目でヤベーやつだと分かるように。座ってるスチルは完全にハイドリヒ卿(Dies irae)ですね。



瀬戸射干為(せと・さがよし/小悪魔/セト)

一見して分からないかもしれませんが小悪魔アバター
姓はそのまま、エジプト神話における嵐と戦争の神“セト”から。
人に取り付いて悪事を為す妖狐のことを射干(正確には射犴と書く。しゃが、やかん)と呼ぶのですが、これ西洋では悪魔憑きって呼びますよね。
この呼び方、仏教と共にシルクロード経由で伝来した外来語の音写なんですが、元々はジャッカルだったとされています。痩せた肉食の悪獣ということで、日本では狐になったんだと。セトもジャッカルの頭を持つ神とされています。
あと射干為でシャッガイと読めるという仕込み。伏線なのかブラフなのか。
敵対勢力としては公的権力と軍事力を担当。指揮系統は警察コンビとは異なっているので直接の組織的影響力はないですが、
造形モデルは、斎藤一るろうに剣心)や土方歳三ゴールデンカムイ)。イメージは「剣豪」。コートの上から羽織っているスカーフは張維新から取ったそうで、この辺イメージが張紅美との武人キャラ共通ですね。



■赤霧市警中央署

市警なのは「県警だと県名が出てしまうから」という単純な理由。
政令指定都市級の地方都市を想定しています。
気候はそこそこの寒冷地で、冬は雪がそれなりに降ります。東北ほどの積雪ではないけど、関ヶ原あたりかな? 暮れに祖父母宅に遊びに行くときよく雪で電車が止まってた印象。




葉暮礼二(はぐれ・れいじ/博麗霊夢

肩書きは赤霧市警中央署刑事部特殊資料調査室室長。階級は警視。
警察コンビの上司で、赤霧市における神話事件調査の指揮官です。とはいえ本人はCMEH(探索者)ではないので直接の捜査は部下に全部任せています。主な仕事は他部署との折衝などの政治的なもの。
本来、警視ともなれば地方警察署の署長に匹敵する階級です。どうして窓際部署の室長をやってるのかというと、「絶対面倒なこと起こして更迭された奴だ」と思わせることによって余計な干渉を敬遠させる狙いと、階級の暴力で他の部署に文句を言わせないためです。穂積が警部補なのも同様。
実は純粋な警察官ではなく、他の専門機関の出身。そのうち明かされると思うのでここでは省略します。
葉暮…博麗のもじり。あと「はぐれけいし」って某ドラマっぽいなという駄洒落。
礼二…霊夢から音を一字取り、次男なので。玲一という兄がいますが、こっちは旧作霊夢対応。
造形モデルは霧谷雄吾(ダブルクロス)と明智健悟金田一少年の事件簿)。どちらもイケメン上司だけど主人公の尻ぬぐいをさせられるタイプ。



近堂香助(こんどう・きょうすけ/森近霖之助

刑事部捜査一課の刑事。階級は警部補。勤続20年超のベテラン43歳、次期課長候補です。
妻子持ちで最近娘が小学校に上がったそうです。酷い目に遭わなければいいのだけど。
近堂…森と香霖より。
香助…霖堂と霖之より。姓名ともに名前と屋号から一字ずつ引っ張っています。
造形モデルは伊丹憲一(相棒)。「亀山ァ!」が「桐山ァ!」になってるってことです。




神室水平(かむろ・すいへい/河城にとり

刑事部鑑識課の26歳。階級は巡査。専門学校出身なので、四年制大学卒の勝人より年下だけど同期。
守彦退場によって空いた勝人の友人枠。技術畑の魔理沙パートナーということでにとりアバターです。
神室…おかっぱ髪の別名、かむろ髪より。
水平…にとりの二つ名「水平思考の河童」より。
造形モデルは米沢守(相棒)。あと勝人の元となった実際の探索者が性格モデルでもあります。



■街の住人

Windmillのあるビルはそのまま「長野ビル」という名前。
元々は長野武巳の資産だったものを凪が遺産相続しています。




鈴屋氷魚(すずや・ひお/本居小鈴)

Windmillのバイト店員。20歳のフリーター。彼氏募集中。
高校卒業後に就職活動に失敗したところ、バイト募集の張り紙につられてしまった可哀相な子。店員の例に漏れず本好きで、専門はイギリス文学。
鈴屋…本居宣長の屋号「鈴屋」から。
氷魚…本の虫→紙魚→英名シルバーフィッシュより。我が家にもよく出るんですが、これはもう仕方ないことなのかなぁ……。
造形モデルは本居小鈴本人(東方鈴奈庵)。



猿女二一(さるめ・ふひと/稗田阿求

Windmillの店員……一応社員の28歳。吃音持ちで上がり症で陰キャオタク。
対人障害を抱えているものの長野自身も理解しているため特に問題なく働いている。
鈴屋ちゃんには恋愛感情は持っていないものの「マジ可愛い……結婚したい……」くらいには好き。恋愛感情は持っていない(重要)。
猿女…稗田氏の祖である猿女氏より。サルタヒコとアメノウズメの系譜です。
二一…稗田阿礼と同一人物だという説のある藤原不比等より。
造形モデルは……うーん具体的にはパッと思い浮かばない。なんかエロ漫画のキモい系主人公とかそういうのだと思う。



山古思信(やまこ・しのぶ/古明地さとり

長野ビルに事務所を置く有限会社「リトルメイズ」社員。小石川瞳のマネージャー。
キラキラした芸能人に憧れていたものの自分自身は平凡である自覚があったため芸能事務所に入社した普通のおねーさん。
心配性で面倒見がよく、善性で暴走し気味な小石川のストッパー役。彼女がいなければ守彦の葬式前日にラジオ出演して新曲紹介してた。
山古…覚の外見の元となった玃(やまこ)より。こちらは読心能力がない中国の妖怪。
思信…「己の信ずる思いを、忍ぶ」というさとりの逆転イメージより。あと「少女セクト」の藩田思信から取りました。




来栖千星(くるす・ちあき/寅丸星

木下継弓と蓮華の叔父で育ての親。故人。富良野夫妻の幼馴染みでもある。
元々、現富良野夫妻と来栖千星、そして彼の姉である木下母で幼馴染みグループだった。木下父は死期が迫っている中で継弓と蓮華を千星に託すのだが、その際に富良野夫妻も協力を申し出て現在の同じマンションに住むこととなった。
実は千星自身もそのときに引っ越しているので、幼い茜にとっては隣に越してきた親子ではないのに一緒に住んでいるという変な家族に見えていた。
彼の死後、遺産は継弓に渡ることになっているのだけど富良野父が管理して後見人を任されている。既に継弓は成人しているのだけど大学卒業後に改めて、ということで現在保留中。
来栖…毘沙門天の守護するとされる須弥山北方の北倶盧洲(ほっくるしゅう)より。
千星…寅丸星から。そのまま星の字を使うと難しいので男性名っぽくもじった。
造形モデルはインディ・ジョーンズとハズラット・ハーン(3×3 EYES)。





また溜まったらやります。


【探索者シート】長野凪

探索者シートの三回目。
今回はラージナンバー枠こと長野店長。



長野凪(ながの・なぎ) 
PL:東風谷早苗
38歳/女性 翻訳家・言語学者(古物研究家/BRB
喫茶“Windmill”店主

探索回数:5回



◆キャラクター像
どこかぼんやりとした喫茶店の店主。そして本の虫。
キャラクターコンセプトは“常人のように努めようとしている魔女”。

三角大学の近くにあるこぢんまりとした喫茶店の店長。
探索者内では「呪文・魔道書係」を担当。探索者内では最も神話への親和性が高い。
とにかく四六時中活字や書物を読んでいて仕事は可能な限り他の店員任せ。それで店が回ってるのは客が少ないから。

夫の死から生まれた長野は、そもそも探索者として誕生したときから彼女の物語は“終わって”いる。穂積が「末期の探索者」なら長野は「死んだ後の探索者」。

造形イメージは読書狂の変人として読子・リードマンR.O.D.)。

◆ステータス



元々15点だったPOWが度重なる呪文の行使によって17まで上昇している。
最も特徴的なのはEDUの値。作成時点で最大値である21を引き当ててしまい、加齢ボーナスによって22となっている。
肉体的ステータスがやや低めだが女性としては平均的か。

探索者内で最大数の呪文を修得している。用途も幅広く、戦闘時にも使っていけるものを持っている。

▼技能
有り余るEDUによって言語おばけと化している。母国語以外に8カ国語を操り、更には神話言語を3種習得。何気に穂積と食屍鬼語で会話できる。
その他、オカルト、人類学、図書館、歴史と文系探索者の鉄板技能を高レベルで押さえ、魔道書の効果により学術系技能も幅広く上昇している。エフェクトの補助もあるため隙がないと言える。

反面、戦闘能力は無いに等しい。ただし呪文を扱えるため全くの無能というわけではない。
高いPOWとエフェクト補助によってスペルキャスターとして立ち回ることになる。良くも悪くも魔道書に依存したタイプとなっている。

▼エフェクト
・【得意分野:メディア】
・【得意分野:神秘】
・【神秘の継承者】
・【資産家】
・【狂気:ビブロフィリア】

狂気以外のユニークエフェクトはない。名目上ユニークではあるものの【資産家】の効果は【警察権限】とほぼ互換性を持つため実質的に汎用エフェクトとなっている。
効果は「ロール1回の成功」と同価値以下であれば任意のアイテムを即座に手に入れることができるというもの。注目すべきは金銭的価値ではなくゲーム的価値であるという点。これは例えば、回復が目的であれば〈医学〉〈応急手当〉と同価値となり、それに相当する回復アイテムとなる。(本来であれば1D3点の回復だが、動画内では組み合わせロールのハウスルールにより2D3+1点の回復相当となる)

【神秘の継承者】は特定アーティファクトの使用解禁だが、長野は所持している魔道書が多いためにエフェクトの取得コストが本来よりも大幅に上昇している。そのため長野のエフェクトは他の探索者よりやや弱いものとなっている。

◆【狂気:ビブロフィリア】

──本を読むのが好き
ただそれだけの、ありふれた嗜好回路
彼女の不幸は他に何も知らなかったこと

知識と物語を愛でることこそが
彼女の生き甲斐であり至上の法悦
禁断の知識であろうと変わりはない

それは例えば信仰、或いは盲信の類
もし仮にこれに勝るものがあるとすれば
愛という名の曖昧なものに措いて他にない


▼効果
・〈速読〉(1%)を使用可能。
 効果:斜め読みまたは研究を行う場合ロールする。成功した場合、所要時間を[1D3+1]で割る。

・RM値に〈速読〉成功率の1/10(切捨て)を加算する。

・「熱狂的な研究」による正気度喪失を無効化する。
 ただし喪失する予定だった正気度ポイントの算出は行なう。これにより耐久力喪失は発生する。

・魔道書が破壊された場合、〈正気度〉ロールが発生する。
 これにより失う正気度ポイントは[斜め読み時の喪失値/研究時の喪失値]となる。

・呪文を使用するとき、成功率をn%上昇させる。
 nは所持している解読済みの魔道書が持つ〈クトゥルフ神話〉の上昇値。ただし複数の魔道書を所持している場合でも上昇値は重複しない。

・ロールプレイ強制「書物を蒐集・保護する」

不定の狂気「■■■■■■した場合、一時的狂気に陥る」を得る。
 その際の狂気の内容は必ず「■■■■■」となる。この効果による発狂は他の発狂に優先される。

▼解説

魔道書を操ることを主眼とした狂気。
〈速読〉、RM値補正、「熱心な研究」の強化と、効果の大半は魔道書を解析することに特化している。
まだ解読した魔道書から呪文を習得し、その成功率を上昇させて使用できる。最終的に呪文を行使して活躍することまで繋がる効果となっている。
一方で魔道書の研究も呪文の行使もSPを削る行為となる。RP強制もあり自分の首を絞めるという部分で相殺されている部分があるためペナルティはやや弱い。

不定の狂気の内容はまだ未公開。当然シナリオに関わる。





■長野凪の過去
恐らく他に書く場がないのでここに記述する。

旧姓・南方凪。南方守彦とは十歳離れた従姉だった。
十二年前、「籠ノ鳥」時点では既に結婚している。

夫となる長野武巳と出会ったのは高校時代。
当時から「本を読む」以外に興味がなかった彼女は、校内では根暗で人付き合いの悪い変人という扱いだった。凪自身も他人がどう思おうと興味がなかったため周囲との溝はますます加速していった。
そんなある日、大学図書館へ行った帰りにふと立ち寄った喫茶店がWindmillだった。

当時の武巳は三十手前。不動産業で成功した長野家の次男で、家業を手伝う代わりに小さな喫茶店を経営していた。
読書好きだった彼にとっての理想の読書環境を形にしたのがWindmillだった。

誰からも邪魔されず、どれだけいても文句を言われず、特別美味しくはないけど良心的な価格のメニュー、流れるのはやかましいJ-Popではなく落ち着いたジャズやピアノ。カウンターの裏には秘密の小さな本棚があり、店員やそれを知っている客が好みの本を置いていく。
凪が常連になるのはすぐだった。
最初は不干渉だったものの徐々に本という共通の話題で盛り上がるようになっていった凪は、やがて自らの初恋を自覚する。

同時にこうも悟る。
コミュ障で根暗で他人に興味のない自分が、よりによって誰かに恋をするなんて金輪際ないだろう――と。

そこから愚直なまでの猛アタックを高校卒業まで敢行し、ついに折れた武巳から大学卒業まで変わらなかったらという言質を引き出した。
他人への興味を持ち、他人との関わり方を学び、初めて夢を持った彼女は、それまでと明らかに変わっていた。
大学では友人も幾らか出来、まるで――普通の少女のように――キャンパスライフを送る。
結局、卒業式が終わるとその足で根負けした夫と入籍届を出し、Windmillでささやかなパーティを開いた。

そうした普通の少女のような人生は、数年後に夫の怪死という形で幕を下ろす。

故に彼女、長野凪という“人間”の物語はとうの昔に終わっている。今あるのは人の形を真似ているだけのナニカでしかない。

彼女にとってこの店は、本以外で唯一愛した“他人”の遺品であり、彼との思い出であり、墓標でもある。
そこに店を経営する意志はなく、ただ保存しているだけに過ぎないのだ。


――もしも二人の間に子供が生まれていたら、もう少し変わったのかもしれない。