現代魔法研究会

TRPG動画用のやつです

「吸血鬼姉妹のクトゥルフ怪奇探索録」の裏話とか(7)

■Part14


◆人を殺すということ
動画におけるシナリオテーマの一つ。
CoCの動画、プレイヤーが増えてはいるけれど、殺人の扱いがなおざりになっているということがあるかと。
殺人は禁忌であるという前提条件。正気と狂気というテーマを取り扱っている以上は避けて通れない要素でしょう。
きちんと殺人を取り扱っている動画をやりたかった。
殺人を犯してしまい苦悩するキャラクター。いっそ狂ってしまいたい。いや、もしかしたらもう狂っているのかもしれない。正気と狂気の境目はどこにあるのか……というのがこういう場面で描くべき探索者の姿だろうと考えます。

◆オコマリ?
カッコウへの伏線の一つ。彼女は人の死というものを理解できていない。
これがAct.00[SIDE:Interlude]に繋がります。

◆呼び出しの連絡
ゲーム終了のアナウンス。
学校らしく出席番号順になっています。五十音。

◆消えたはずの靴が
帰られるようになった=これもゲーム終了の合図。
もはや探索者に対して怪異を起こす理由はなくなったことも意味している。

◆神とは
コメントでは「またか」等々言われていましたが、対初心者だからこそのニャルラトテップ。
黒幕ニャルは黄金パターン。そしてクトゥルフ神話における最高のスターキャラクターです。
だからこそ安易に使ってはいけないのだけど。
殺人についてもだけど、彼の扱いが雑だったりお座なりなことに対する憤りとか衝動をぶつけた動画でもあります。
なので多少戯画化して描いているものの、それらと同列に扱われるのは心外ではあります。

動画に登場するニャルラトテップは“ゲームマスター”という化身。
KPが直接介入するための手段でもありますが、願いを叶えるための試練を与える存在でもあります。
本動画の神格にはほぼ例外なく「願いを叶える存在」という属性が強制付与されています。
シュド=メルも探索者にハレを助けられ恩を受けたので加護を与えています。ヒプノスも裏で幾つか……これはカッコウでそのうち出てきます。

この化身は探索者の敵ではありません。“悪意的”ではあるものの悪意はなく、災害のようなものとして描いています。
つまり動画における神とは“そういう現象”が人格を持っているだけです。これは後のシーンでフランシスが代弁していますが。

「だって貴方達は“神”をそういうものだと定義するんでしょう?」

人に定義されたからこそその形を持っている、ニャルラトテップとはこういう存在だ、というのが行動原理です。
人が神を想像しなければ彼らは創造されなかった。

◆広川夕子の願い
もっと食べたい。
これにもきちんと理由があります。ぶっちゃけ私怨。

私がCoCを初期にプレイしていたときに、一時的狂気でダイスロールさせられ「奇妙なものを食べたくなる」を引き当てて深きものに齧りつかされたことに起因します。
私はその内容が嫌だったものの仕方なく従っていましたが、嫌なプレイを強要される=楽しくないプレイはただの失敗です。Part15でもその辺少し触れましたが。
その後、ルールブックに狂気を決定する項目を確認して「ダメじゃねーか!」となったのがPart11でのフランシスの狂気決定で話していた部分に繋がります。きちんと相談して決めよう。

「人が目の前の生きた神話生物を食べたがる」という生理的嫌悪を狂人=悪役に被せて昇華しようとしたのがボスの狂気を決めました。
ニャルとか殺人とかアレコレ含めて、この動画の6割くらいは私の憤懣で出来ています。恨みがましい。

◆ニャルラトテップの二つ名
やっぱりここにも「分かる人には~」ネタを仕込んでる。
劇中で口にした二つ名は以下の通り。

・千貌
・暗黒のファラオ
・闇よりもなお昏き存在(ゴールデン・ドーン)
・快楽の司(リンパン=タン)
・監視者(ウォッチャー)
・盗賊と吟遊詩人の神(メルクリウス)

千貌、暗黒のファラオは言わずもがな。
闇よりもなお~は『スレイヤーズ』より、L様こと金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)、転じて“明けの明星”ルシファーのこと。それに合わせてオカルト結社の最高峰・黄金の夜明け団=ゴールデン・ドーンを掛けて。
リンパン=タンはクトゥルフ神話の元型となったロード・ダンセイニのペガーナ神話より、ニャルラトテップに対応する神格。これはカッコウの揺籃でも出てきます。詳しくはそっちでそのうち。
監視者は傍観者としてのニャルの特性から。また直接的な繋がりはないものの、『Ark』(Sound HorizonElysion~幻想物語組曲~』より)に登場する同名の存在をパロディ。
メルクリウスはギリシャ神話に登場する神格。トリックスターとしての役割はニャルラトテップに共通する。また『Dies irae』(light/正田崇)に登場するカール・クラフト=メルクリウスから。こちらもニャルラトテップと似たようなキャラクター性を持っている。

◆三度、炎の精
「いあ よぐそとす まれうす」は《ヨグ=ソトースのこぶし》の詠唱。Malleusはラテン語で鉄槌の意味。
ラウンド経過なしの即時発動で短縮詠唱、神格だからこそという演出。

「アレの眷属なのは~」と言ってるのはクトゥグァがニャルの宿敵だから。《炎の精の召喚/従属》はクトゥグァの加護にあたるのだけど、ニャルの眷属といえばシャンタクか狩り立てる恐怖。どちらも強力すぎるためバランス的に仕方なく炎の精をチョイスしてるという意味もあります。

クトゥルフ神話〉+5%はクリア処理を前倒ししてやってます。
こうやって強制付与していくスタイル。

◆私には無理
字幕で差を出していますが、小泉縁としての一人称は“私”です。
作ったのは“吾”、神としてのニャルラトテップ。“吾”は神格の一人称として使用しています。
小泉縁はニャルラトテップの欠片も欠片、空間作成もできない程度の弱い力しか持ちません。それでも人間からすればとんでもない存在なんですが。

◆シュド・メル
マ゛マ゛ーッ!!
我が子を愛し、我が子の為ならあらゆる敵と戦う。例えそれがニャルラトテップだったとしても。
クトーニアンは最も「人間らしい」神話生物の一つだと思っています。「母親」を神格化したものとして描いています。だからこその女神。
最初の地震も彼女のせい。ニャルラトテップにハレを攫われたときの衝撃がアレです。
ほんの少しの登場ですが、魅力的なキャラクターに描けていれば幸い。

◆からの正気度ロール→アイデア
ダイスやばい。何これ。

◆フランシスの独白、神に対する考察
フランシス自身は一応穏健派カトリック信者。文化・学問として異教の神についても勉強している。
んだけど……大丈夫、まだ信者じゃない。これはYHWHと対立するものじゃなくて神と呼ばれるなんかそういう生き物。猫好きとかそういうものの延長。多分。

◆不可触
ふれることあたわず。
《被害をそらす》です。シュド・メルの連撃を全部キャンセルする程度なら可能。
小泉は「呪文を使って防御しないといけない」程度。

◆ムリナノー
自分でも台本書いてて可愛いと思った。


■Part15


◆背中の腫れ
深い催眠状態にある人に対して、「これは焼けた火箸だ」という催眠を掛けて鉛筆を押しつけると蚯蚓腫れが起きる、という話から。
ドリームランドで死んだ場合、探索者はドリームランドから弾かれて覚醒の世界で目を覚ますわけですが、今回の舞台は覚醒の世界に近い場所だったため現実に影響します。
例え夢であろうと、死んだと思えば死ぬ。
お前が思うんならそうなんだろう。お前の中ではな。

◆なんでこの本が
クリア報酬です。

◆新しい朝だ希望の朝だ、学校に行こう、夢だけど夢じゃなかった
やっぱこいつサブカルオタじゃねーの。
「姉に見つかったら~」はカッコウ冒頭、ミリアムへの伏線。

◆究極の選択
カッコウへと続く最も強い伏線。
つまり究極の選択をしなければならないフラグがここで立ってます。

◆ホモかお前は
ところどころで意識して書いてます。
実質ホモだよお前の親友。

◆違うの?
フランシスの表情が微妙に変化していく。
彼女自身、勝人に対して淡い恋心を抱いているのを自覚してるのだけど、吊り橋効果でもあるというのも理解している。その上での問いかけ。
ここで勝人が言葉に詰まって「困ってしまった」ためにコリャ脈がねーなと判断します。
恋心を冗談だと勝人にも自分にも誤魔化して、秘密を共有した掛け替えのない友人として今後も付き合っていこうと決めた場面。
そういう意味ではフランシスはこの時点で「究極の選択」をしてるのかも。

守彦は気付いてる。

◆その後の広川
全て伝聞、警察発表。
真相を知っているのは彼らだけではない。
ただし異界で起きた顛末を特定することが出来なかったため十二年後まで特定が遅れた。

◆正気度ポイントの回復
期待値34.5ポイント。おおよそシナリオ中で減る量に少しオマケ程度にしています。
継続して使うことを前提にしているのでプラマイゼロくらいで落ち着くように計算。探索者を最後まで使うのが基本スタイル。もちろんその場限りのキャラクターも作りますが。

継続できるようにしながら最大正気度を下げていって圧死させる。
改めて、私はキャラクターの死に対してある種の美学を持っているのだなあと。

ダイスを多くすることで期待値に寄せ、振れ幅の大きなダイスを混ぜることで乱数の偏りを生み出しています。色々理由を付けて調整。
全員プラスになったのは偶々としか言えない。

「神話生物の撃破」の回復もここで処理。
撃破は何も対象のHPをゼロにしたことだけとは限らない。少なくとも私は、神格を封印したり退散させたりする場合も同様に計算します。それは十分に勝利だろう。
広川夕子は死亡時の1D6、ハレの生還はシュド・メルの1D20で計算。
NPCの生還はいつも1D3~1D4で計算しています。あくまで追加ボーナスなので。

◆成長チェック
これやらないと探索者成長しないんで。
シナリオクリアごとのキャラクターの差が生まれないため、基本的に常にチェック。シナリオと無関係な場合のみチェックさせません。
どうせ広く浅くしか成長しないし新規キャラで99まで振れるんだからガンガン上げちまえという方針。キャラが強くなったと思える方が面白いしね。
こっそりフランシスの〈頭突き〉にチェックが付いてる。

◆探索者の成長
これについてはルールをまとめたブロマガでも書いたけど、探索者を続投させるための強化。
させてキャラの今後を考えさせることで思い入れを強化。その後をやりたくなるようにさせる。

◆シナリオにおける悪手
PLに嫌な思いをさせる=面白くないと思わせること。これにつきる。
テーマ性は重要なファクターとしてシナリオを構成するけど、それで楽しめなくなっては本末転倒。

神話生物がヒロインで狂人がボスというのもかなり危うい。
この構図は可哀想なモンスター問題の類型の一つ、「善良なゴブリンと邪悪な神官」問題と根本的には同じ。
ほとんどの場合に地雷認定されるような要素を含むシナリオだった。

◆遊びだからこそ全力で
その結果がカッコウ。正直自分で首絞めてると思う。

◆幸せな夢を
「吸血鬼姉妹のクトゥルフ怪奇探索録」の締め。
ここから動画全体のエピローグというかオマケのクリスマスパーティに繋がる。

◆キャラクターのその後
フランシスが発狂している=幕間で正気度ロールが発生している。
「籠ノ鳥」での勝人の最終SPとカッコウの初期SPがずれているのはそのためです。

◆広川の死、警察からの発表はなかった
発表は、ない。
けれど……。

◆クリスマスパーティ
大人に成長させるため高校時代は神話事件を経由せず比較的平和に過ごすことになる。
三年生だけがクリスマスにパーティをやるという伝統があるという設定。一年二年は参加できない。
ようやく三年生になってパーティをやって「もう卒業なんだ」と実感してしまい泣く生徒もいるとか。

運営費は四分割され、それぞれ高校、大学、三年生保護者会、有志基金となっている。お世話になった先輩へとお小遣いを切り崩す後輩もいる。
現物支給もあり。消え物は調理され、他はビンゴ大会などへ回される。たまに変な景品が混ざっていたり豪華すぎるものもあったり。もちろん危険物や嫌がらせ品は受付段階で弾いている。
なんていうどうでもいい設定を考えてたりするあたり私は設定厨です。

◆推薦決まったんだって? うちの大学
三人の通ってる高校は大学の附属高校だと暗に。
富良野茜の通っている高校です。進学先の大学も木下継弓の通ってるもの。
勝人はカッコウの主役二人の先輩なわけです。

◆マフラーと手袋の交換
別に手編みとかではない。フランシスもさすがにそれは「重すぎる」と思っている。
勝人と守彦のやりとりについて。友人に「友達へのクリスマスプレゼントを店でやいのやいの言いながら選ぶのって、もしかしてこれは実質セックスなのでは?」と言われました。私もそう思う。

◆もうすぐ帰らなきゃだから
予定よりも数ヶ月早く帰ることになるのをまだ彼女は知らない。

◆また会えるさ、きっと
エンディングなら綺麗に終わるんだけど、続いちゃうからフラグ化してしまう。
残 念 だ っ た な


以下あとがき部分

ク・リトル・リトル
本気でオススメしません。ドン引きされるレベル。私もこれ面白いよとは人に勧められないし、こんなのを手放しで勧めてくる友人とは付き合いを考えます。
登場ヒロイン全員が障害者、メインヒロインが四肢欠損というあたりでどれくらい闇が深いのかお察し下さい。
ただテーマ性は面白いしきちんと描いている。美辞麗句で描くのではなく、社会的弱者の受ける偽善的ハラスメントを取り上げている点も面白い。
全員障害者という部分はカッコウに引き継がれている。小石川瞳のモデルもヒロインの一人。むしろランディは名前そのままだし。

◆次回予告
続編製作決定!のアレ。
この時点でほぼ全てのスチルが出来上がっていたわけですが、あえてラフを使ったりムービーもシンプルにしています。



以上。どうでもいい裏話を片っ端から並べただけでしたが。
カッコウも第一幕が終わったらやりますかね。